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 妄想雑記

       おとうさんと娘(養女)


第11回 「夏の終わり」


 つくつくほーし つくつくほーし

 このセミの声を聞くと、夏の終わりを感じます。
 そして、なぜか子どもの頃の宿題に追われた夏の終わりを思い出すのです。
 もっと早くやっておけば!
 計画通りにすすめておけば!
 後になって必ず思うけれど、結局いつもやらなかった、あの頃。
 どうもそういった所は血を引いてなくても受け継ぐようです。
 娘(養女)のちせは、今必死に漢字の書き取りをやっています。
「あー、もうっ! ぜんぜんおわらなーい!」
 先程から何度も聞く叫び。手伝わない父親への当てつけみたいです。
 だいたい夏休みの宿題を親に手伝ってもらおうというほうが間違っています。
 「サザエさん」の中では毎年のようにカツオが家族を手伝わせていますが、うちではそんなことはしなかったし、しようとも思いませんでしたよ。
「宿題とは、たとえどんな手段を使ってもいいが、必ず自分でやるものだ。自分の課題を自分でやらないとろくなヤツにならない」
 昨日ちせに言ったセリフ。娘はだまって言うことを聞きましたが、すこぶる機嫌が悪いです。そのせいか、今日はまだ親子の会話がありません。教育とはいえ、かなりつらいです…。
 机の上にはお盆で供えたキュウリとナスで作った動物のおきものがさびしく横たわっています。ちせが暇なら、ナスとキュウリの本来の使い方についていろいろとレクチャーできるんですが……。
「おとうさんっ!」
 お、本日はじめての会話だ。
「おう。なんだ?」
「お茶持ってきて」
 こちらを向きもせず、言い捨てる。初の会話はお茶くみ命令みたいです。
「…はい」
 とぼとぼ
「あと、おとうさん」
「ん。なんだ?」
「用もないのにわたしのへやに入ってうろうろするのやめてくれない? 気がちって、ちっとも宿題がすすまないから!」
「で、でていったほうがいい?」
「うん。ずっと後ろで見ていられたらすすまないよ」
 うなじがきれいだから見とれていただけなんだが。
「そ、そうか。そりゃ、じゃましてわるかった」
「はやく、お茶もってきてね〜」
 パタン

 それきり、もう1時間もちせの顔を見ていません。
 学校に行っているわけでもなく、同じ家にいてですよ!?
 私とちせの間にはたった1枚の板があるだけなのに!
 あまりにも遠い娘……。
 ああ、気が狂いそうです。
 あんまりです。神様。
 私がいつ、どこで、何をしたというのですか?
 これもすべて学校が諸悪の根源なのです。いや、文部科学省か。
 ゆとり教育とのたまいながら、夏休みには毎年毎年山のような宿題がでるわけです。それをやるためにはそれなり時間が必要なわけで、とうぜん我が娘もそれをやらねばなりません。
 すると、本来ならば1カ月半無条件で娘といちゃいちゃ(しかも薄着、たまにはキャミなどの露出の多い服装で)できる時間がうばわれるわけですよ。
 さらに、宿題に追われて気が立った娘に八つ当たりされ、それに対して教育のためつらく当たったりせねばならず、強いては親子の関係すら壊れかねない状況を作っているわけですよ、あのボンクラ官僚&教師という存在は!
 ゆるさん! 断じて許さん!
 夏休みの宿題がもとで、私の人生を賭けた遠大な計画「光源氏計画」に支障がでたら、いったいどうしてくれるというのか!!
 かくなる上は、まず小学校に行って夏休みが明けても登校しなくていいように、ガソリンをぶちまけてこようか…
「うるさいっ! 静かにして!」
 隣の娘の部屋から、金切り声が飛んできました。
「うるさいから、リビングにでも行って!」
 娘よ。さらに父をおまえから遠ざけようというのか。父さんはとてもかなしいぞ。
「あと、おやつでも作っといて!」
「……はい」

 ああっ!
 もう2時間も娘の像を角膜にうつしてねぇ!
 1時間10分間も声を聞いていないし、1時間45分32秒間ちせのにおいを鼻腔にいれてないっ!
 だめだっ! 狂ってしまう!
 襲いかかる禁断症状と戦いながら、なんとかちせの部屋を開けるという行動を取らないようにしているけれど、すでに限界は近くなってきています。
 気を紛らわせようと、洗面台でがしがし顔を洗います。ちっとも紛れないですが。まさに焼け石に水状態。
 しかたなく、ぬれた顔をぬぐおうと辺りを見回したとき、洗濯かごが目に留まりました。
 !
 一気に洗濯かごに向い、今日の朝までちせが着ていたパジャマを取りだすと、大きく深呼吸しました。
 くんくんくん
 1時間50分14秒52ぶりのちせのにおいです。
 ちょっと汗のしみ込んだにおいです。
 少量ですがよだれも含まれています。においでわかります。
 めいいっぱい頭をパジャマ(主にわきの下辺り)にうずめます。
 辺り一面ちせです。
 ちせがいます。
 感じます。
 存在を確認できます。
 さらに強く感じようとパジャマをそっとおき、さらに洗濯カゴをさばくります。
 ありました。
 ちいさな三角形の白い布きれが
 大きく息を吐きだし、一気に吸い上げます。
 鼻腔にいろいろな物体が入ってきます。
 ちせのあらゆる分泌物が!
 ありとあらゆる液や汁やブツが、私の中に飛び込んできます!!
 ああっ……
「なにやってんの、おとうさん」
「え、ええっと、な、なにかなぁ。ははは」
 気がつくとちせが後ろにたっていました。
「ちょっと、洗濯でもしようかなぁってな、ははは」
「雨降ってんのに?」
「んー、まあ、その、なんだ。洗濯のための準備だよ。晴れたらすぐにできるようにってね。ははは」
「ふーん」
「ははは。それより、ちせはどうしたんだ? 宿題はもうおわったのか?」
「おわってないよ! 工作しようとおもったら、つくえにおいといたキュウリとナスに水をこぼしちゃって、服もぬれちゃったからおきに来たの」
ぬれちゃった……?
「うん。スカートまでびちゃびちゃ」
スカートまで……
 キラリと光るナスビ
「だから着替えようとって……おとうさん、なんでキュウリとナスを取り上げるの?」
「ふふふ」
「足の割りばしなんでとるの?」
「ふふふ……分泌して濡れちゃったんだね……」
「ナスに何塗ってるの? 『ローション(オレンジ)』って何?」
「さあ、ナスとキュウリの本当の使い方をおしえてあげましょうねぇ!」
「きゃあ、おとうさん! どうしたの!」
「ああ、こんなにぬらしちゃって……ちせは悪いコだなぁ」
「ああっ、おとうさん! おとうさーーーん!!」
「ちせっ! 『ナスがママ、キュウリがパパ』だよぉおお!!!」


 みなさん宿題は終わりましたか?


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第12回 「ヤキイモ ファイヤー」

「あい、おつり500円ね」
「ありがとう、おじちゃん!」
「こっちこそありがとな、お嬢ちゃん」
 散歩の途中見つけた石ヤキイモ売りの車で、ヤキイモを買いました。
 見つけたのは娘(養女)のちせ。
「いしや〜きいも。おいもっ!」
 という声が聞こえるか聞こえないかぐらいの遠いところを走っていた車をめざとく見つけるやいなや、ダッシュでかけて行きました。そして、私が追いついた時にはすでにイモを手にしているという状態。払うしかありません。
「今シーズン初ヤキイモだぁ」
「ヤキイモ、ほんとに好きなのな」
「うん!」
 ちせに限らず、女性はヤキイモ好きが多いですね。一体何故なんでしょうか。ちょっと考えてみましょう。
 まず、女性は甘いものが好きな人が多いからという理由があげられますが、べつにヤキイモでなくても良いですよね。同じシーズンものならクリとかでもいいでしょうし。
 次に思いつくのは、女性は便秘になりがちな人が多いです。そこから、自然と繊維が多いものを欲するようになっていて、シーズンもので甘いヤキイモに目がいってしまうのではないかと言う仮説です。どうでしょうか?
 他には、手近に購買意欲を満足させられるからとか、あの呼びかけの独特な節が女性を妙な気にさせるとかも考えられますね。
「さっきから何ぶつぶつ言ってんの?」
 さっそくヤキイモにかぶりつきながら、ちせが聞いてきました。
「あ〜、どうしたら『ヤキイモ』で雑記が書けるか考えていたんだが……」
「ざっきってなに?」
「ん〜、大人のヨミモノだね。ちせはまだ早いから見ちゃダメだ」
「ふ〜ん」
 私が言葉を切るとすぐさまヤキイモに戻っていきます。満面の笑みを浮かべながら少しずつかじる娘を見るのは大変和みます。これで、ほっぺにヤキイモのカスなんてついていたら、喜び勇んでなめ回したいぐらいです。
「ところで、ちせ」
「なに?」
「ちせはなんでヤキイモ好きなんだ?」
「ん〜、おいしいからかなぁ。オナラが出ちゃうのははずかしいんだけどね。てへへ」
 照れる娘もなかなかおつなものです。
「まあ、イモ食べたらオナラでやすいからなぁ。しかたないよ」
「おとうさんの前でもオナラプーしちゃうかもね。あはは」
「お父さんの前でしてもいいけど、ストーブの前ではしたらあかんぞ」
「えっ、なんで?」
「オナラはなんでできているか知ってるか、ちせ?」
「ガスって前に先生が言っていたような気がする」
「そうだ。メタンガスというガスでできているんだ。このメタンガスが臭いんで、オナラは臭くなるんだけど、ただ臭いだけじゃなくて燃えるんだよ、このガスは」
「へ〜」
「へ〜じゃないぞ。燃えるガスを火のついたストーブの前でしたらどうなると思う?」
「燃えるの?」
「そう。火がつくんだよ」
「うそっ!?」
「ウソじゃないぞ。ガスがたくさん出るような大きなオナラをしたときに、火が近くにあると燃えちゃうんだ」
「おしり、あつそう」
「熱いどころじゃないよ。やけどしちゃうぞ」
「うわぁ」
「おしりやけどしたら、薬ぬるのもおしりを出して、他の人にぬってもらわなきゃいけないんだ。そんなのいやだろ?」
「それはいやかもしれないけど……そのときはおとうさんにぬってもらうからいいや。えへへ」
!?
「おとうさんならはずかしくないしね〜。そのときはよろしくね、おとうさんっ!」
「……ホントだね」
「うん」
「やけどしたら、おしりにぐりぐりとあんなものやこんなものまで押し込んじゃったりするけど。それだけじゃすまなくて、そんなものまでにゅるにゅるのぐにゅぐにゅになるまでやっちゃうけどいいんだね?」
「う、うん。なんかこわいけど」
「こわいことなんて何にもないよ。うん。言うならば世界が変わるぐらいだから。全然こわくない」
「う、うん」
「じゃあ、二十歳近くなったらやけどしようねぇ。それまで大事に育ててあげるから」
「だいじょうぶ。やけどなんてしないも〜ん」
 そういうと目の前まで来た家のドアに向かって、ちせは走っていきました。

 大丈夫。
 ちゃんと二十歳になったら、やけどするようにしておくからね。我が娘よ。


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第13回 「年忘れ親子放談」

「おとうさん、おとうさん!」
「なんだい、そんなに顔を真っ赤にして。なんかえちーなことでもしてたのかい?」
「なに言ってるの、もう。そんなことより、おおみそかだよ。こーしんしないの?」
「いやー、だってやっとサーバーからパスワード届いたところだしさぁ。OS再インストしたらなくしちゃって」
「それじゃあ、シリルおじさんといっしょじゃない! まったく兄弟そろって何してるんだか…(-_-;)」
「まあまあ。で、なんでそんなこと聞くんだい?」
「これを見て!」
「なになに……『最近ちせちゃんが出てこないのでさびしいです。もっとはげしくいじめて活躍させてあげてください』と」
「わたしあてのファンレターよ!(^^♪」
「……ちせ」
「なによ?」
「こんな電波さんでもいいのかい? しかもファンレターって言っても、月に2回ぐらいだし、しかもほとんど同じ人でも?」
「そ、それは……おとうさんのサイトが弱小だからいけないんじゃないの!?」
「……どうせ、弱小ですよ……そうですとも。しょせん私は遥と美月のどちらを選んでいいかわからず、ふらふらと大空寺につかまってしまうようなビミョーなやつですから……今度こそ茜を……」
「おとうさん、東京ではじめて『君が望む永遠』のアニメ見たからって、今さら最初からゲームをやりなおそうとするのはやめてっ! 今年が終わっちゃう!!(ToT)」
「じゃあ、どうして欲しいというんだ」
「えっとぉ、ちせが大かつやくするような話をつくってよ。ねっ?」
「……最近も実は書いたのがあるんだけどな」
「なら、それを載せちゃえばいいじゃん」
「だけど、あまりにハードなエログロ描写が多すぎて、FTPする前にさすがにやばいんじゃないかと思ってやめたんだよねぇ」
「エログロ……(・_・;)」
「ここんとこずっと仕事やら何やらで、ストレスフルだったから妄想もかなりひどくてねぇ……じゃあ、それ載せとこうか?」
「や、やめよ。うん。やめましょう、おとうさま」
「でも、そうすると載せるもんないぞ。まあ、今見たらそんなにグロくもないし、これで行っとこうかな……」
「(無視して)ちせちゃんのみんなのメールに答えるコーナー!! どんどん、ぱふぱふ!\(^o^)/」
「メールったって、まともなメールなんか弱小のうちには月に1通ぐらいしか……」
「(あくまで無視して)みんなからのメールで一番多かった質問は、『ちせちゃんはいったい何歳なの?』 でした。もうっ、女の子に歳を聞くなんて、みんな根っからの非モテ人間ね☆ はずかしいけど、おとうさんに答えてもらっちゃいます!(*^。^*)」
「そういや『ぱふぱふ』って、ドラクエでもドラゴンボールでも出てたなぁ。そんなのができる巨乳よりも、どうやってもぱふぱふできそうにない胸でムリにやってもらうシチュエーションのほうが萌えるよなぁ……」
「病的な妄想くりひろげてないで、質問に答える!-y(`_`@)」
「グレはじめてる……。えっと、特に年齢は設定してません。というか、毎回名前が一緒なだけで、違う人間ぐらいに思ってます。完全読みきりだと思っていただければいいです。って、こんな感じのマジな答えでよろしいでしょうか、ちせ様?」
「なに、若干Mの喜びっぽい表情見せてんのよ!?(-"-)」
「ま、まあ、いいじゃないですか……じゃあ、私はおせちの用意がありますので、これにて失礼ということで……」
「もう質問コーナー終わるの?」
「というよりも、メールの質問にはちゃんと個人的に答えてるし、そもそも質問メール自体がほとんどない……すみません、すみません。私がひとえに悪いんでございます。ちせ様のご期待に応えられないばっかりに」
「だからうれしそうにあやまらないでよ、おとうさん。もういいや。おなかすいたから、これでも食べよ〜(^◇^)」
(゚口゚;)
「ポリポリしておいし〜。……ん? おとうさん、どしたの?」
「ち、ちせ……食べてしまったのか?」
「あ、ごめんなさい。おせちつまみ食いしちゃって」
「……何をしたか、わかっているのか?」
「え、おせち食べたら、そんなにまずかった?」
「ちせ、おせち料理にはとても重要な願いや思いがこめられているんだよ」
「そうなの?(゚◇゚;)」
「黒豆は『まめにくらせるように』、昆布巻きは『よろこぶ』、たつくりは江戸時代に片口イワシが高級な肥料として使われたことから『豊年豊作』などなど、食べたその年の間にそれぞれに込められた願いがかなうように、ある意味魂を込めながら作る料理なんだよ」
「そうだったんだ……」
「で、今ちせが食べたのは何だったか知っているかい?」
「数の子だけど……って、おとうさん、何でいきなり脱ぎはじめるの!?
「数の子に込められた願い、それは『子宝にめぐませますように』!!」
(゚◇゚;)
「もはや今年は今日1日しかないっ! 願いをかなえるには今すぐしこみをせねばなるまいっ!!」
「え? ええっ?(゚口゚;)」
「さあっ、ちせ! 父さんもがんばるから、ニシンのようにばんばん子どもをこさえるんだぞぉ〜!!」
「おとうさん、おとうさーーーん!!\(Tロ\)」


 来年もよろしくお願い申し上げます。


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第14回 妄想おとうさん

 週末なので少しよふかしして本を読んでいると、となりのへやで物音がしました。
 なにかなぁとのぞいてみると、おとうさんがビデオをみながらゴロゴロともだえています。

「凛ちゃん、かわい〜」

 かりにも30ちかくのいいオトナが、血はつながってないとはいえ娘に見せる姿ではとてもありません。

「お、なんだ。ちせ、まだ起きたのか」

 ゆるみきった顔をこちらへ向けるおとうさん。
 おとうさんのせいで気になってきたっていうのに、まったく自覚がありません。

「ちせも見るか? この間の『僕と彼女と彼女の生きる道』。いいぞ〜」
「ううん。本読んでるところだから」
「本なんていつでも読めるじゃないか。ちせも草薙くん、好きだろ?」

 ビデオもいつでもみれると思いながらも、おとなしく言うことを聞くことにします。こういう危ないモードに入ったおとうさんに逆らうと、あとで何されるかわかりませんから。

「凛ちゃんがいいんだよ〜」

 うん。それはもうこのドラマがはじまってから、ずっと聞いてるよ。

「親子の会話のぎこちなさがたまんないんだよなぁ。『おとうさん、これでいいですか』とか『わかりました』とか、まったく親子間でありえないような会話のやり取りもツボなんだが、その合間にたまーに見せる凛ちゃんの子どもらしさがハァハァものだな。はっきり言って小雪は邪魔。そんなのうつしている暇があったら、凛ちゃんにカット裂かんかい!」

 小雪さんのファンが聞いたら、死ぬほど怒られそうなこと言ってます。ファンの方は、ただのロリのたわごとだと思っててください。おとうさんは、20代女性にまったく興味を持っていないヘンタイさんですので。
 というか、娘に語るフリをして、ネット上に『僕と彼女と彼女の生きる道』の凛ちゃんの書きなぐりたいだけなんですよ、おとうさんって人は。困ったものです。

「くさなぎぃぃー!!」

 おや、今度は剛くんですか?
 TVをみると、剛くんが泣いています

「お前の気持ちはよくわかるぞぉ。そうだ、そうだよな、凛ちゃんみたいなかわいい娘が、がんばってがんばって、やっとの思いで逆上がりができるようになったら、涙も流れるよな……いいヤツだよ、お前……」

 おとうさんの中で、剛くんの評価がぐんとあがったようです。
 うわぁ、おとうさん、マジ泣きしてるし……。

「ちせもうちに養女としてきたばかりのころは、少しよそよそしい感じがしてて、よかったよなぁ……あのころの写真はどこへ行ったかなっと」

 回想モードに入ってしまいました。
 こうなるとながーくなるので、今のうちにたいさんしなくちゃ……

「あった、あった。覚えてるか、ちせ。このころはちせも必死で知っている敬語を使ってお父さんに話していたことを」

 つかまってしまいました。

「で、あれは5歳の夏だったかな、ちせがおねしょをしてしまって」
「そ、それは、おとうさんがむりやりラムネをピロピロ飲みさせまくったからじゃない」
「そうだっけ?」
「そうだよっ!」

 ホント、都合のいいことしか覚えてないんだから。

「ま、まあ原因はいいとして、おねしょ事件があってから、ちせとも上手くいくようになったんだよなぁ」
「だって、おとうさん、ちせのふとんを見てうれしそうに洗濯してるから、なんだかおもしろくて……」
「うれしそうだったっけ?」
「うれしそうにしてたよ」
「たしかにうれしかったかも。ちせが一生懸命謝っている姿がかわいかったしなぁ」

 あのとき、あやまってるわたしをしかりもせず、もうするなよって言ったのをおとうさんは覚えてるかなぁ。そのときに、わたしのおとうさんはこの人だって思ったんだけど。

「おとうさん、覚えてる? そのとき……」
「おお、覚えてるとも。ちせがうちにきて最初のそして最後のおねしょだからな」
「その言い方は気になるけど…おぼえてるんだ、おとうさん」
「もちろんだとも。ほら、ちせのおねしょの記念写真だ。あと、そのときのシーツの切れ端もきちんととっておいてあるぞ……ぐふっ!」

 わたしのコブシをほほに思い切りくらい、もんどりうってたおれこむおとうさん。
 どうしてこうへんたいチックなものをあつめているのかなぁ、もう。ジト目で見てやろ。

「うん。いいね。冷たい目線もいい感じぃぃイイ!!

 へんたいさんには逆効果だったみたい。ホントにどうしようもないなぁ。
 とにかく、写真もボロキレも回収っと。

 あれ? あわてておとうさん取りに来ると思ったのに、おとなしくしてる。
 見るとうれしそうに、内ポケットからおんなじ写真を何枚も取り出してるし……

「やれやれって表情もいいよ、ちせ!」

 うちのおとうさん、誰かなんとかしてくれないかなぁ、犯罪に走ってしまう前に。


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第15話  か、かれた?

 最近ひとりエッチをしていません。

 か、枯れた?

 いやいや、ちょっと待て。
 先週はものすごく忙しいときが多かったじゃないか。だから疲れててできなかったんじゃないかな。でも、よくよく考えてみると3週間ぐらい余裕でして
ないことに気づきました。

 やっぱり、枯れた?

 いかーん。
 これではいかんですよ。まだ三十路に突入したばかりだというのに、この枯れっぷりはまずいですよ。今日こそはなんとしても一発かまして、枯れてないことを証明しておかないと。

 ということで、がしがししているとするじゃないですか。そのときに現場を誰かに見られたらどうしようと思っていませんか?
 一人暮らしならともかく、誰かと一緒に住んでいるときは、必ずその危険性があるわけですよ。一番危険性があるのは、親や兄弟といった家族なわけですが、ひょっとすると兄弟の友人とか恋人とかっていう可能性も会ったりするわけですよね。


「お義父さん、この宿題わかんないんだけど…」

 突然扉が開きました。

「ち、ちせっ!」
「あっ、ごめんなさいっ!」

 バタン

 すぐに閉じられるドア。
 娘(養女)に恥ずかしい姿を見られてしまうなんて、かなり気まずいです。
 でも、ほら、まだちせは小学生だから、着替えをのぞいてしまったんだって思ってるかもしれないし。とりあえず、その線でごまかすしかありません。

「おとうさん、入ってもいい?」
「うん」

 再びゆっくりとドアが開きます。

「あはは、お父さん、着替え中に突然ドアが開くもんだからビックリしちゃったよ。あはは」
「……してたんでしょ」
「え?」
「エッチなことしてたんでしょ?」
「……」
「隠さなくてもいいのに。この間HPを見てたら、お父さんの歳ぐらいで毎日してるのもおかしくないって」
「な、なにをですかね、ちせくん?」
「……もし、おとうさんがいいっていうなら、わたしがしても……
「ええぇぇっっっ!!!」


 ……
 こんな妄想で脳内でイっちゃってるから、最近してないんだと思います。


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第16話  タマゴ料理

「ちせ、今日の夕飯はなにがいい?」
「オムライス!」
 食欲の秋といいますが、わが娘(養女)のちせもご多分にもれず食欲旺盛、餓鬼のごとくよく食べるんです。
「またオムライス? 先週ぐらいにもオムライスじゃなかったっけ」
「だって、おとうさんのオムライス好きなんだもん」
「うそつけ。オムライスに字を書きたいだけなんだろ?」
 バレたかという顔をするちせ。小さいころからやたらとケチャップでオムの上に字を書くのが好きなんです。スクランブルエッグにすると、すねて口もきいてくれないほど。
 最近では名前を書くのには飽きたらしく、思いついた言葉をならびたてるようになってきました。この間なんて、『三日天下』って書いてありましたし。
「この間は『天』がちょっとタレてうまくかけなかったから、ちゃんとした『三日天下』を書きたいんだぁ」
 できれば他の言葉、例えば「ハァハァ」なんかがいいなぁと思う親の心を知らず、ケチャップをさばく練習に余念がありません。
 しかたありません。オムライスにするとしましょう。
「ついでにオヤツもつくるから、ちせも手伝ってくれ」
「それじゃまずは卵をあわだててもらおうかな」
「あ、ちょっと待ってね」
 言い終わるや否や、ちせはダッシュで自分の部屋のほうへ走っていき、すぐに戻ってきました。手にはうすピンク色のちいさなエプロンが握られています。
「この間もらったエプロン、せっかくだから着ようと思って」
「だめだ!」
 私の急な制止に、ちせはビクッと身体を震わせます。
「そんなもの身に着けてしまったら、おとうさんのエプロン属性が暴走して、エプロン以外のあらゆる衣類を無理やりにでもはぎとって、三つ指をつく体勢を強要してしまうじゃないか! しかも『ご飯にします? お風呂? それともワ・タ・シ?』って脳内でふき出しつけて、『もちろんお前さぁァアアゥゥウウリリリィィイイイ!!』ってことになってしまう可能性が98.75%もある! それはしまっときなさい!!」
「え〜」
「え〜、じゃない! いいからしまっておいて! おとうさんの視界にそのブツを入れないで!!」
 ちせはしぶしぶエプロンをもとのところにしまうと、もくもくと卵白をあわ立たせ始めました。あきらかに機嫌がわるくなっています。これも娘のためなのに……。

 しばらくの間トントンという私の包丁の音と、シャカシャカという泡立て器の音だけがキッチンの空気を震わせていきます。
 会話なし。
 つらいです。娘と語らいながらの料理だったはずなのに。背中に哀愁を漂わせながら包丁をふるっていると、
「おとうさん」
「なんだい」
 ぶっきらぼうにかけられた声に満面の笑みで返したのですが、ちせはあいかわらずちいさなほっぺをやや膨らませながら、
「こんぐらいでいいの?」
 とあわ立てた卵白が入ったボールをこちらへ見せてきます。
「もう少しかな。もうちょっと泡が立つぐらいまぜておいて」
「えぇ〜、まだぁ〜?」
 もう飽きたようです。なかばやけっぱちで泡立てを再開するちせ。いったい誰に似たんでしょうか。先が思いやられます。
 そう思いながら、やれやれと包丁を再び手にしたところで、ガシャリという音が背後からしました。
「あ〜あ」
「どうした?」
「ちょっとこぼしちゃった」
 泡だった卵白がテーブルにたれていました。
「顔にもついちゃったよぉ」
 ねっとりとした卵白のいくつかが、ちせのピンクのほほや口のまわりにはりついています。

 ガタタン

「ちょっとおとうさん! 包丁おとしたらアブナイよ!」
「ちせ…」
「なに?」
「知ってるか?」
「何を?」
「泡立てた卵白は、AVの中出しのときに精子のかわりに使われるってことを……」
「なに、せーしって?」
 口の周りについた卵白を舌でペロリとなめとりながら、ちせは言いました。
「はぁあああっっ! ダメだ、ちせっ! そんなものを口に含んだり、舌の上でころがしたり、『おいしい…もっと……』とか言ったりしちゃダメだぁあああっ!!」
「コレ、おいしくないよ……って、おとうさん?」
「ダメだダメだダメだ! 他のヤツの白濁した液体をなめるだなんて、お天道様がゆるしたとしてもお父さんは断じて許すわけにはいかないっ!! いけないんだぁあっ!!」
「おとうさん! 泡立てた卵白をわたしの顔にふりかけるのはやめてぇぇっ!!」
「白濁液が顔にいっぱい……」
「おとうさーん!!」



 こんなサイトですが、3年目もよろしく。


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第17話  副作用バンザイ

 花粉症シーズンまっただ中ですね。
 ご多分に漏れず、私もひどい有様です。今朝も横向いて寝ていたせいか、鼻から右頬までカピカピな白い膜がはりついていました。娘(養女)のちせ(仮名)には見せられない姿です。顔射されたまま寝たらきっとこうなるんだろうなと思いながら起床。まったく不愉快な朝になってしまいました。
 仕方なく花粉症の薬を飲むことにしました。前にも書いたことがあるんですが、どうにも花粉症の成分の「抗ヒスタミン」と相性が悪く、仕事をバリバリやってる最中でも恐ろしい眠気とだるさに襲われるんです。一昨日の夜も飲んだんですが、いつもなら2,3時に寝るところを12時にはぐっすり眠ってしまいました。
 というわけで今日も薬を飲むべきか、鼻水垂れ流してでも覚醒している自分をとるかの選択に迷っております。
「おとうさん、それはのまないとダメよ」
 薬をもったままの私を見て、ちせは言いました。
「そうは言ってもな、ちせ。おとうさんにだって仕事があるんだよ。洗濯や掃除、ちせのご飯もつくらなきゃなんないし」
「だいじょうぶだよ。わたしがやっておくから」
「でもなぁ…」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。それに、わたし、おとうさんがカフンショウでくるしんでいるとこ、これ以上見たくないし……」
「ちせ…」
「だから、クスリのんで」
「わかったよ。ありがとう、ちせ」

 しかしやっぱり薬の副作用には勝てず、私は家事もそこそこに眠りについてしまいました。まったく不甲斐ない。ちせに申し訳ないったらありません。


 寝てしまってからどのくらいが経ったでしょうか。
 私は身体をゆすられるのに気がついて、ぼんやりと目をさましました。身体はまだまだ眠りからはさめてはおらず、副作用のだるさも全開で襲い掛かってくる状態ではありましたが、動きのある方に顔を向けます。
「ごめんなさい。おきちゃった?」
 そこには私のズボンに手をかけた娘がいました。
「な、なにをしてるんだ、ちせ!」
「なにって、おとうさんにパジャマきせようとおもってぬがしてるの」
「いいっ! 自分でぬぐから、それはいいよ」
「だって、おとうさん、クスリのんだから動きたくないでしょ? いつもクスリのんだあとはダルイダルイって言ってるじゃない」
「そりゃそうだが」
「だから、ちせにまかせてくれればいいって。でもちょっと腰あげて」
 なすがままズボンを脱がされる私。
 ちせはすぽんと脱がすと、パジャマの下をはかせようとしてくれました。
「でもやっぱりおとうさんはおもいや。うんしょ」
「重いって言うな」
「だってー、ホントのことだし。……って、あれぇ」
「なんだ?」
「おとうさんのパンツかえるのわすれてた。これもぬがしちゃお♪」
「うわっ、やめろ!」
「やめなーい」
「やめてー」
「だるいんだから、わたしにまかせればいいんだって」
「やだー」
「うーん、ちんちんがひっかかってぬがせにくいよぉ
「……」
「なんかどんどんひっかかりが多くなってるぅ」
「……萌える」
「え、何? お、おとうさん?」
「このシチュエーションは萌える! 萌えるぞぉ!!」
「な、何? どんどん大きくなって……あ、おとうさーん!」
「やられるがままって最高! さあもっと脱がすがいい! 煽るがいい! もだえさせるがいい! おとうさんは身体がダルイ、ダルイぞ。もっと下半身から上半身までまんべんなくしてくれ。かわりに全身をくまなくカピカピの白い膜で覆ってやるからなぁぁぁああっっ!!!!」
「おとうさん、おとーさーんっっ!!」


 ……
 誰か眠くならない花粉症のクスリを教えてください。


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第18話  『秋の素材と娘と私』

 秋も終盤戦に入ってきましたが、皆さんの今年の『○○の秋』はなんでしたか?
 私はもっぱら『食欲の秋』に邁進させていただきました。特にサンマ。今年も豊漁とのことで(なんかここ数年ずっと豊漁ですが)安価でおいしいのをいいことに山ほど食べさせていただきました。漁師さんに感謝。
 他にもキノコ類や果物もおいしいですよね。私が『食欲の秋』なのですから、当然娘(養女)のちせもいつもにまして食欲旺盛となっております。
「おとうさん、カキ食べたい!」
「今ごはん食べたばっかじゃないか。もうちょっと後にしなさい」
「デザートは必要でしょ? デザート、デザート♪」
 甘やかしてはいけないとは思いつつも、嬉しそうな娘の顔を見るとついついカキをむいてしまう私がいます。困ったものです。
「おいしい〜。ねね、もう1コ食べてもいい?」
「ダメダメ。食べすぎは身体に毒だぞ」
「え〜」
「そんなこというなら、明日からはデザートなしだ」
「うーん……じゃあガマンする」
 しぶしぶ言うことを聞くちせ。ちょっと切なそうにしている表情がGoodです。瞬時に網膜に永久保存しました。これで半世紀は反芻して楽しめます。
 しかしこのままではこの後のゴールデンタイムの会話に支障が出てしまいます。話題をそれとなくそらしてくとしましょう。
「ところでな、ちせ」
「なに?」
「ほら『食欲の秋』ということばがあるだろ? 秋はいろいろおいしいものが採れるからそういう風に言われるんだが、ちせは秋の食べ物で何が好きなんだ?」
「サンマ!」
「サンマ?」
「うん。おいしいし、安いんでしょ?」
 なんて安上がり…いやいや父親思いの娘でしょう。それに比べて、家計のことまで娘に気を使わせてしまって私はなんてダメなオヤジなのでしょうか……。
「なんで泣いてるの?」
「いやいや、泣いてなんかいないよ……。そうかサンマが好きなのか」
「うん。しかもサンマって長くて光っててカッコイイ感じがするし」
「短小で黒光ってなくてゴメンよ……」
「なに? 光?」
「あー、何でもないよ」
「変なの。あとね、クリも好き」
クリの花!?
「ちがうよ〜。あのお祭りとかで売ってる、てん…なんとかクリってあるじゃんか。アレ、おいしいよね〜」
「クリ…」
「クリとお茶があるとたくさん食べれちゃう♪」
「クリと(ry」
「そうだ! この間おばあちゃんが持ってきたマツタケ! すごいいいにおいがしたよ〜」
「クリと…マツタケ……」
「すごいよね、一本何万円もするやつもあるって、おあばちゃんいってたよ。高いんだね〜……って、おとうさん?
「ゴメンよ…マツタケじゃなくてゴメンよ……」
「おとうさん…なんで裸になってるの?」
「マツタケじゃないけど…むしろシメジっぽいけど……」
「おとうさん?」
「ちせの大好きなクリはしっかり皮むいてあげるし、舞茸は十分にかき混ぜてあげるから。秋だけに飽きがこないぐらいにね……」
「何か上手いこと言ったみたいな顔してないで……おとうさん、おとうさーーんっ!!」
「クリの花の臭いがする炊き込みご飯つくるぞーーっ!!」

 ……
 秋ってこわいですね。


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第19話  雪国へ

「すごいね、おとうさん!」
 初めて見る雪国の景色に、娘(養女)のちせ(仮名)ははしゃぎ回っています。太平洋側ではこれほど大量の雪を見ることはありませんし、気持ちはわからないでもないですがはしゃぎすぎなのは父親としては気になってしかたありません。それでなくても私自身も久しぶりの雪国で先ほどから足下がおぼつかないのですから。
「雪だるまつくろうよ。雪だるま!」
「わかったわかった。まずは荷物下ろしてからな」
 自分の物だけでも運ばせようと思ったのですが、ちせには私の言うことなどまったく耳に届いていないようで、早速自分一人で雪玉の作成に入ってしまいました。
「雪は滑るから、転ばないように気をつけるんだぞ」
「だいじょうぶだよ。おとうさんじゃないし」
 義父の威厳もへったくれもありません。

「つかれたー」
 私が引っ越しの荷下ろしが終了したあと、ちせがようやく家に帰ってきました。
「雪だるまできたよ。おとうさん見て〜」
「わかった、わかった。後で見るから」
「えー。今すぐ見てきてよ」
 寒さでいつもはほんのりとピンク色といった程度の頬をリンゴのように真っ赤に染めて、ちせは大きな手袋をぶんぶんふりながら私を呼びつけます。都会の洗練された美少女も良いですが、田舎の純粋無垢な少女という設定もなかなか捨てがたい物があるなぁと一人妄想しながら玄関先を窓からのぞいてみると、サッカーボールほどの大きさの雪だるまがちょこんと鎮座しておりました。
「なかなか雪玉が大きくならなくて、ちっちゃくなっちゃったんだ……。ホントはもっともっと大きなのをおとうさんに見せようと思ったんだけど」
 消え入りそうな語尾。残念そうな恥じ入った表情。
「いやいや可愛らしくていいじゃないか」
「でも…」
「おとうさんはこういうの好きだぞ。やたら大きいだけなのは良くない。物には可愛らしく見える大きさ、美しく見える大きさというものがある。たとえて言うならばBカップとかな!」
「?」
「無駄に大きいのは美観を損ねて非常によろしくないのだ。あと変に年数を経てすれているのも良くない。そういう点を考えても、あの雪だるまは適度な大きさを保っており、可愛らしいバランスを持っている。しかもあえて小さめに押さえることであの雪だるまには少年・少女が持つ純粋性が表れている。非常にすばらしい作品だよ、ちせくん!」
「よくわからないけど、ありがとう…」
 怪訝そうな顔で私の顔を見上げている娘。いずれ彼女も私の思想がわかるときがくると思います。今から楽しみです。
「うむ。まあとにかく寒いから早くお風呂に入りなさい。しもやけできてしまうぞ」
「え? もうできてるよ」
「な、なんだってぇっ!!!」
「う、うん。足の小指にできちゃって…」
 なんてことでしょう。いつもいつも娘のボディチェックをかかさず日課としている私が、娘の身体の変調に気づいてやれないとは! まさに父親失格。
「た、たまに痛かったり、ちょっと身体が熱くなってくると痛がゆかったりしてしまっているのか?」
「今ちょっとかゆいかなぁ」
「すぐに見せなさい!」
 私の剣幕に押されたのか、娘は右足の靴下を脱ぎ始めました。現れた小さな足の小指は少しはれぼったく、赤みを帯びています。
「し、しもやけ…」
「寒いとちょっと痛いね…っておとうさん、さわんないでよ!」
「ここをこうすると」
 もみもみ
「い、いたいよ、おとうさん…」
 さすりさすり
「あつくなると、ちょっと痛がゆい……」
 ぐにゅぐにゅ
「ああっ! やめてっ!」
 ぺろぺろ
「ああ…そんなとこ……ううっ」
 かみかみ
「いたいよぉ…やさしくしてぇ……」


 そんなこんなで雪国編スタートだと思います。たぶん。


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